2025年9月15日、アメリカのトランプ前大統領が「必要であれば国家非常事態を宣言する」との意向を示したと報じられました。発言の背景には、首都ワシントンでの警察と移民・税関捜査局(ICE)の協力をめぐる問題があります。この記事では、アメリカの国家非常事態宣言の仕組みや、過去の事例、日本の制度との違いを整理します。
アメリカの国家非常事態宣言とは
アメリカの国家非常事態宣言は、1976年制定の「国家緊急事態法(National Emergencies Act)」に基づき大統領が発令します。対象は戦争やテロ、大規模災害など、国家の安全に関わる重大事態です。
宣言によって大統領は、通常は制限されている権限を行使できるようになります。ただし、その具体的な権限は宣言の根拠となる個別法によって規定され、すべてを自由に行使できるわけではありません。
トランプ氏と国家非常事態宣言
トランプ氏は過去に複数回、国家非常事態宣言を発令または言及しています。
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2019年:南部国境の不法移民対策を目的に宣言。国防費を壁建設に充てるため議会との対立を招きました。
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2020年3月:新型コロナウイルス感染拡大に対応するため宣言。その後2023年5月、バイデン政権下で解除されました。
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2025年1月20日:大統領就任日に、メキシコ国境での不法移民問題に対応するため宣言を発令しました。
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2025年9月15日:ワシントンの警察とICEの協力問題をめぐり、「必要であれば国家非常事態を宣言する」との意向を示しました。
日本の「緊急事態宣言」との違い
日本にはアメリカと同じ「国家非常事態宣言」の制度は存在しません。その代わりに「新型インフルエンザ等対策特別措置法」などに基づく「緊急事態宣言」があります。
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発令権限:日本では内閣総理大臣が発令
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対象事態:全国的かつ急速な感染症のまん延や災害など
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内容:都道府県知事による外出自粛要請や施設使用制限の指示
一方、アメリカの制度は大統領が国防や移民政策など幅広い分野で権限を行使できる点が特徴で、日本とは大きく異なります。
まとめ
アメリカの国家非常事態宣言は「国家緊急事態法」に基づき発令される制度で、大統領に特別な権限を与えます。トランプ氏は過去に国境問題や新型コロナ対応でこの制度を活用しており、2025年9月にも再び言及しました。日本の緊急事態宣言とは根拠法や対象範囲が異なり、両国で大きく制度設計が違う点が特徴といえるでしょう。
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